名探偵こたロック・ホームズ「こた毛同盟」前篇
私の名前は、こたロック・ホームズ。
ここはK川県ベーカリー街のアパートメントの一室、私の探偵事務所だ。
私は一枚のチラシに書かれた文章を前に、その意味するところについて深く瞑想していた。
カチャリ・・・
そっと玄関の扉を開くわずかな音を、それでも私は聞き逃す事はなかった。
シュッ、シュッ・・・
さらに微かな音が聞こえてきた。私は耳をそば立てた。
侵入者は玄関に留まり何かをしている様子だ。
しかし私はとっくにその侵入者の正体に気付いていた。
「ワトスン君、さっさと部屋に入ってきたらどうだね?」
(jam)や、やあホームズ。事務所にいたのだね?そして僕の名前はワトスンではない」
ややうわずった声を発しながら、ワトスンは部屋に入ってきた
「キミの方こそ、一体どこへ行っていたのだね?ワトスン君」
(jam)大したところじゃないよ。それよりそっちの方はどうだったんだい?」
「今朝、キミから貰ったチラシだ」
私はワトスンの前にそのチラシを差し出した
【急募!こた毛求む。軽微な仕事に時給4玉子ボーロ。お仕事の時間は本日16時から20時。ぜひ来られたし!@NPO法人こた毛同盟】
(jam)ふうむ、悪くない話だ。キミほど立派なこた毛の持ち主はそうはいない。どうして行かなかったんだね?」
時計の針は18時半を指していた。
「もちろん、行ったとも。だが指定された場所に行くと無人の事務所のドアに貼り紙があったのだよ」
(jam)貼り紙?」
「【こた毛同盟は解散する。だが約束の報酬は支払うので20時までここで待機されたし!】と書かれてあった」
(jam)ええっ!?じゃあキミは玉子ボーロの報酬を諦めて帰ってきたのかい?」
「はっはっは。腹がすいている時の方が頭の回転はよくなるのさ・・・僕は頭脳なのだよ、ワトスン君」
(jam)言ってる意味がわからない」
「やれやれ、私はいつもキミに私のやり方を残らず説明する事になるんだな。僕が犯罪者じゃなくてロンドン市民は本当に幸せだよ」
(jam)ホームズ、つまりキミはお腹を空かせているのに玉子ボーロを受け取らずに帰ってきたのだね。そしてここはロンドンではない」
「半分だけ正解だ、ワトスン君。私の毎日の夕食時間は18時。そして指定された事務所は無人だった。その事務所と私の探偵事務所はほんの目と鼻の先だ。私は定時に夕食を摂り、デザートに玉子ボーロを所望する英国紳士なのだよ」
(jam)つ、つまり貼り紙を見たキミは無人だった事をいいことに、いったん夕ご飯を食べに戻り、そして再び指定場所に赴き玉子ボーロを手に入れようと・・・」
「ふふふ・・・さ、早く食事の用意をしてくれたまえ、ワトスン君」
(jam)ホームズの食への執着を侮っていた・・・計算違いだ」
「ん、なんだって?」
私はワトスンの呟きに一抹の疑惑を感じとった
ワトスンは黙り込み、沈黙が室内を覆った。その時!(後篇につづく)
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